日本人の平均生涯医療費 2,724万円

NHKハートネット「社会保障ってなんだ?!」より引用

 「皆保険」体制は、単純に誰もが健康保険証を持つだけではなく、さまざまな仕組みや規制を加え、いわば「岩盤」の上に成り立ちます。規制緩和の大波に乗って「岩盤規制の打破」が叫ばれますが、守るべき岩盤と砕くべき岩盤をよく見分けることが大事なのです。

日本人は生涯にどれぐらい医療費を使うのでしょうか。
 丈夫な人も病弱な人もいますが、男女平均2,724万円(厚労省推計、2017年度)に上ります。そんな高額な「強制的消費」に耐えられる人は少ないので、みんなが支払い能力に応じ毎月保険料を納め、病気やケガに備えているのです。
 もうひとつ注意すべきは、生涯医療費の半分は70歳以降で使うことです。高齢期に集中する医療ニーズとその費用をどう負担するのか。試行錯誤を続け、2008年度からは75歳以上対象の「後期高齢者医療制度」を創設し対処しています(総費用を保険料1割、公費4割、全保険制度からの支援金5割で分担される)。

「高額療養費制度」が設けられました

 たとえば、70歳未満で一般的な所得層(標準報酬月額28~50万円)は、月額100万円の医療費がかかっても、3割負担の30万円ではなく9万円弱で済みます。70歳以上で一般的な所得層(健保で標準報酬月額26万円以下、国保で課税所得145万円未満)は1割負担ですが、医療費がいくらかかっても外来のみは上限月1万8,000円(個人)、外来・入院は計月5万7,600円(世帯全員の計)までの負担で済みます。

 高額療養費制度は、医療が高度化する中で1975(昭和50)10月から全面実施されました(健保組合等は73年から先行実施)。それ以前はどうだったのでしょうか。

 腎不全患者にとって「人工透析(とうせき)」の開発・改良は”救いの神”で、1967(昭和42)年、医療保険の適用対象にされました。しかし、自己負担は当時で毎月20~30万円に上りました。

 医事評論の先駆者・川上武医師は大著「戦後日本病人史」にこう記しました。

『「金の切れ目が命の切れ目」で、経済的事情により透析を中止する悲惨な例も見られた。また、機器も不足していたため、透析機の順番待ちとなった患者は「他人の死」を待つ以外なかった。』

 高額療養費制度が多数の命を救い、透析装置や携帯型腹膜(ふくまく)の普及をもたらしました。現在は、長期的に高い治療費が必要な人工透析、血友病、血液製剤汚染によるHIV感染に限って原則月1万円の自己負担で済みます。

引用:朝日新聞

長谷川豊氏、維新から出馬へ 会見で人工透析ブログ釈明

2017年2月6日

 長谷川氏は昨年9月に「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!」などとブログに掲載し、批判を受けた。6日に千葉県庁で記者会見した長谷川氏は「偏見を与えかねない内容でした。深く謝罪させていただきたい」と釈明した。

 同席した馬場伸幸幹事長は「発信自体は不適切であったが、そのことをもって社会から永遠に退場させられるということは我々の理念とは違う」と説明した。

 千葉1区には、自民現職の門山宏哲氏(52)、民進現職の田嶋要氏(55)が立候補する見通しだ。共産党は新顔の大野隆氏(47)の擁立を発表している。

小泉内閣の政策金融手入れ

引用は、参議院調査 補論 2005年8月「日本借金増えたのは経済活性化、年金、国鉄債務、政府金融など」
【補論1】膨張した政府債務の行方 -過去の事例を踏まえて-
【補論6】正念場を迎える政策金融改革

政策金融8機関に住宅金融公庫を加えると全金融機関に占める政策金融のシェアは 99 年度以降 03 年度まで 18~19%程度で推移している。
政策金融8機関とは、①国民生活金融公庫、②農林漁業金融公庫、③中小企
業金融公庫、④公営企業金融公庫、⑤沖縄振興開発金融公庫、⑥国際協力銀行、⑦日本政策投資銀行、⑧商工組合中央金庫を指す

2-1 公的金融改革の視点から
公的金融の比重が高いという現況に対しては、①民間金融機関が十分に対応可能な対象
への資金供給等により民業を圧迫し、民間金融機関の収益機会を奪っている、②金融市場の価格メカニズム(=金利形成機能)を歪め、非効率なプロジェクトが実施されたり、退出すべき企業が存続したりすることを通じて、経済全体の成長力を低下させている5、といった弊害が指摘されている。とりわけ、②は金融の根幹にも関わる重要な問題であり、竹中経済財政政策担当大臣も、「この国では、政府系金融機関が市場のメカニズムを阻害している面が間違いなくあり、そうした問題の見直しが必要である」との認識を示している6。
さらに言えば、本来的には、「市場の失敗」を是正することに、公的金融の存在意義はあるのだが、「政府の失敗」が非常に大きい点にも目配りが必要である(図表3)。
金融システムにおける政府の関与が真の意味で正当化されるためには、「政府の失敗」
が「市場の失敗」を下回ることが示されなければならず、そうした観点からも政策金融に対する不断の点検が求められる。

2-2 財投改革の完結、国債管理政策上も不可避
財投は 01 年度に新制度が始動し、規模の面ではかなりの縮減が進んでいる。新制度は、
事業に必要な資金を財投債、財投機関債等により調達する仕組みであり、郵貯等の原資の
伸びが財投規模に直接リンクしなくなったため、80 年代から 90 年代半ばに特に顕著に見
られた「財投の財政化」が許容されるようなことは想定しにくくなった。前回の改革がな
ければ、新制度移行後の規模の縮減は実現していない可能性も高く、この点は改革の成果
として評価すべきであろう。
その一方で、財投機関債に関する「暗黙の政府保証」や縮減が進んでいない政府保証債
の問題等、いくつかの課題を積み残していることも事実である。さらに、それらの課題に
加え、財投に占める割合が4割超と高い政策金融の見直しなくしては、財投改革の完結は
あり得ない。
また、政策金融改革は国債管理政策とも密な関係を持つ。具体的には、07 年度に郵政民
営化が予定されているほか、同年度末に財投改革に伴う経過措置7が切れる。その一方で、
「2008 年問題」に象徴されるとおり、今後数年間に関しては、大量の借換債の発行が見込
まれている8。そうした意味でも、国債の安定消化を中心とした国債管理政策の重要性が一
層高まることが考えられる。
07 年度末頃までに、政策金融を真に必要な事業・機関に絞り込めるか否かは、財投への
依存度を低下させ、財投のスリム化に寄与できるかどうかと同時に、国債の一種である財
投債の発行規模にも少なからぬ影響を与え、国債管理政策上も重要な意味を有する。


2-3 郵政民営化だけでは資金循環の効率化には不十分
90 年代以降の公的部門の肥大化と民間部門の安全志向の高まりは資金循環にも大きな
影響を及ぼし、民から官への資金の流れが拡大した。特に顕著であるのは、家計から郵貯・
簡保等へ流れる資金の拡大であり、財投制度をとおして、これらの資金は政策金融にも流
れていった。01 年度に始動した新たな財投制度の下で、こうした資金の流れは、若干是正
されつつあるものの、従前から指摘されてきた公的部門への資金偏在という問題は未だ解
消されるには至っていない。バブルの清算が終わりつつある今こそ、資金循環の効率化を
図るべきであり、07 年度に予定されている郵政民営化には、こうした点も企図されている
と推察される。しかしながら、東京大学の林文夫教授が、「郵政民営化だけでは、資金の流
れは変わらない」と指摘している9とおり、資金循環の効率化のためには、政策金融機関を
はじめとする財投出口機関の改革が同時に実行されることが不可欠である。

文春20/8 本庶佑氏ワクチン開発を語る

引用:文春デジタル

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ノーベル賞学者の警告 東京五輪までに「ワクチン」はできない|本庶佑

スキ 196 文藝春秋digital 2020年7月11日 08:00

来年の五輪開催を願う気持ちはわかる。だが、現実に目を向けなければならない。冷静な判断をせず、着実な準備もしないまま、「来年には落ち着くだろう」という希望的な観測を持つべきではない。/文・本庶佑(京都大学高等研究院副院長・特別教授)

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本庶氏

目次

過大な期待と理解不足

私は6月19日、がん治療薬「オプジーボ」の特許に関する対価を巡って、小野薬品工業に対し、約226億円の支払いを求める訴訟を起こしました。

昨年から訴訟の準備を進めていましたが、「なんとか交渉で決着をつけましょう」と間に入って下さる方もいたので、少し待っていたのです。ところが、小野の対応はまったく変わらず、一方で新型コロナウイルスの感染拡大もあり、今年に入ってから裁判所の動きもスローになっていたので、このタイミングでの提訴になりました。

私は、免疫を抑制するたんぱく質「PD-1」を発見し、その仕組みを解明し、さらにがん治療法を発見したことでノーベル生理学・医学賞を受賞したのですが、この特許を基にがん治療薬を実用化したのが小野薬品です。オプジーボの売上高は今や世界で年8000億円に上ります。

今回の訴訟については、後ほどお話ししますが、知的財産に詳しくなかった私は当初、信じられないほど低いライセンス料で小野薬品とPD-1阻害剤によるがん治療法特許の使用契約を結んでしまいました。以来、契約を改定する交渉を重ねてきましたが、小野は「支払う」と言った約束を反故にしたり、いったん提示した条件を後で値切ったり、極めて不誠実な対応を続けてきたのです。

小野への憤りだけではありません。私が訴訟にまで踏み切ったのは、このままでは日本の産学連携が崩壊し、生命科学者が知的搾取され続けるという危機感があるからです。

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がん治療薬「オプジーボ」

日本は今、新型コロナとの長い闘いの渦中にあります。一時期より落ち着いてきたとはいえ、感染者数は増え続けている。わが国はこのウイルスとどう対峙していくつもりなのか。どんな闘い方をするにせよ、生命科学の力が欠かせません。

しかし、日本の政治家や行政を見る限り、生命科学や医学に対する過大な期待と理解不足があるような気がしてならないのです。

来年の五輪開催を願う気持ちはわかりますが、もっと現実に目を向けないといけない。冷静な判断をせず、着実な準備もしないまま、「来年には感染は落ち着くだろう」という希望的な観測を聞くにつけ、私は不安を感じざるを得ないのです。

変異と副作用が問題

コロナとの闘いを勝利に導くには、「予防」「治療」「診断」の3つの対策を立て直さなければなりません。

まず私が警鐘を鳴らしたいのは、予防に関して「ワクチン」への過度な期待は禁物だということです。安倍晋三首相は記者会見で、「東京五輪を完全な形で開催するならワクチンの開発がとても重要だ」と述べていましたが、それは非常にハードルが高いと言わざるを得ない。その理由から説明しましょう。

そもそも、新型コロナウイルスはインフルエンザウイルスやHIVウイルスと同じように、「DNA」ではなく、「RNA」を遺伝子に持つウイルスです。このRNAウイルスの場合、効果的なワクチンを作るのは難しいことが知られています。

ビル・ゲイツは、HIVワクチンなどの開発にこれまで何百憶円と注ぎ込みましたが、それでも、ほとんど成功していません。

なぜか。端的に言えば、二重らせんという安定的な構造を持つDNAに対し、一重らせんのRNAは、その構造が不安定で、遺伝子が変異しやすい。インフルエンザのワクチンを打っても効かないことが多いのは、流行している間に、ウイルスの遺伝子が変異していくからです。遺伝子が変異してしまうと、ワクチンが効きにくくなったり、まったく効かなくなったりするのです。

新型コロナも、変異のスピードが非常に速い。中国で発生して以来、世界各地に広がっていく過程で変異を繰り返し、5月末ですでに数百の変異があるという報告があります。

使用_新型コロナウイルスを拡大表示

新型コロナウイルス

ワクチンが完成しても、開発当初とは異なる遺伝子のウイルスが蔓延しているかもしれない。そうなると、一部のウイルスにしか効かないことも十分にあり得ます。

もう一つ、ワクチンには「副作用」という大きな問題があります。ワクチン開発では良いところまで行きながら、臨床の段階で副作用が出て、100億円、1000億円ものお金がパーになったというケースは枚挙に暇がない。1976年に米国で新型インフルエンザの流行に備え、見切り発車で全国民へのワクチン接種を始めたものの、ギラン・バレー症候群などの副作用が出て投与中止になるという悲劇的な事件が起きたこともあります。

ただ、こうした副作用はワクチンには付き物なのです。実際、副作用の被害を受けられた方は大勢いる。だから反ワクチン運動なども起きてしまうわけです。ただ、私はそういった不利益を考慮しても、基本的には、一種の「社会防衛」としてワクチンの開発自体はやるべきだと思います。

ところが今の日本では、首を傾げざるを得ないようなことが行われている。日本で開発し、治験までやると言っているグループがありますが、あまりに現実離れした話でしょう。

ワクチンの有効性を評価するには、数千人健常な人を集め、打ったグループと打たなかったグループ、双方の感染率を比べなければいけません。しかし、この比較試験を感染が抑えられている今の日本でやるのは非常に難しいと思います。

今の日本で、仮にワクチンを打った3000人に感染者がゼロだったとしても、ワクチンを打たなかった3000人に何人の感染者が出たら有効と言えるのか。ブラジルのような感染者数が爆発的に増えている地域であれば、はっきりした差が出るかもしれない。しかし日本での比較試験はほぼ不可能と言っていいのです。

こうした開発の高いハードルを考えた時、東京五輪までの1年でワクチンを開発・製造するということが、いかに困難か想像がつくのではないでしょうか。期待を煽るような報道を見るにつけ、政治家や行政は、この現実を理解しているのだろうかと心配になるのです。

ワクチンより治療薬を

では、新型コロナの対策を諦めなければいけないのかと言われれば、そうではありません。私は、当面ワクチン開発よりも、「治療薬」のほうに期待すべきだと考えています。「既存薬」の中には、すでに効果が報告されているものもあり、治験を進めれば、新型コロナに有効な薬が見つかる可能性はあります。

例えば、国産薬として注目されている「アビガン」は、抗インフルエンザ薬としてすでに承認された薬で、どういう人に副作用があるかもわかっています。コロナに使う場合には、「適応外使用」にあたるので、保険が適用されませんが、それでも患者さんが希望すれば、医師の裁量で投与できる。こういった薬を使わない手はありません。

ただ、治療薬の保険適用には、ワクチン開発と同じく比較試験の壁が立ちはだかります。アビガンについても、大学病院で比較試験が進められていますが、症状の改善が見られる中で、投与しない対照群の充分なデータを蓄積できていません。安倍首相も当初「5月中にもアビガンを承認」と希望的観測を述べていたものの、遅れが出ているというのが現実でしょう。

治療薬の投与にあたっては、新型コロナに「潜伏期」「初期段階」「重症期」の3つのステージがあることを踏まえるべきです。ステージによって使うべき薬剤は変えたほうが効果が上がるかもしれません。

まず、目立った症状がない「潜伏期」は診断が難しいですが、もし早期にわかれば、抗ウイルス薬を使用するのがいいでしょう。

発熱や喉の痛みなどの症状が出始めた「初期段階」では、そこにプラスして免疫を活性化する薬。それこそ原理的に言えば、免疫のブレーキを解除するオプジーボは効果的なはずです。実際、アメリカでは治験が始まっています。

そして肺炎などを起こす「重症期」には、逆に免疫反応が暴走する「サイトカインストーム」が起きますから、それを抑えていく薬、「アクテムラ」などが有効です。このように既存薬の効能をきちんと整理して使っていくことが大切です。

なぜ日本人の死者が少ないか

ただ幸いなことに、日本では死者数が欧米などに比べ、極端に少ない。6月末時点で死者数は1000人を切っています。一般的なインフルエンザによる死者数は2017年のデータを見ると、年2600人程度。一方、コロナの死者数は、仮にこのままのペースで増えたとしても年3000人程度に留まります。わが国では、インフルエンザとコロナの死者数がほぼ同じなのです。

なぜ日本人の死者数がこれほど少ないのか。私は、人種によって異なる「免疫力」の差ではないか、と見ています。

ジョンズ・ホプキンス大学がHPで国別死者数を公表しているのですが、上位に並ぶのはスペインやイタリアなどで、人口100万人当たり約500〜600人。これに対して、日本は約7人、中国は約3人に過ぎない。ところが、決して衛生状態が良いとは言えないインドやパキスタン、バングラデシュといった国でも10〜20人程度なのです。

2桁もの大きな違いがあるということは、手洗いやうがい、マスク着用の習慣といった、よく言われているような衛生観念の高さだけが理由ではなかろうということです。

でも、それはなぜなのか。

桐野夏生氏と武田砂鉄氏の対談。自己責任論と自助を迫る自民党・維新政治に”NO”を言う

・親の虐待。「躾だったんです」。高市は、日本人の躾不足指摘し、これでは国防国家はできない、と。

・自己責任論は諸悪の根源。非正規は「おまえのせい」なのか?

・私怨は自己責任論に対する反逆。”公”、前に出よ。

コロナの初期20/4、世界でどんな見通し・展開が言われていた?

コロナワクチン、1年~1年半先? 各国の現状と見通し

新型コロナウイルス

朝日新聞:合田禄、今直也、ロンドン=下司佳代子 富田洸平、ワシントン=香取啓介2020年4月30日 5時00分

大阪大学の研究チームが開発中のDNAワクチンの候補(大阪大提供)

  •  世界の感染者が300万人を突破し、新型コロナウイルスの猛威はおさまらない。期待が集まるのは、感染や重症化を防ぐためのワクチンだ。新たな技術も使い、国内外の製薬会社や研究機関が開発に乗り出している。実際にワクチンを接種できる日はいつ、やってくるのか。

 「ワクチンがあるかどうか次第だ」。英BBCは、来夏に延期になった東京五輪パラリンピックについて、ワクチンが開発されないと、「開催は非現実的」とする英エディンバラ大の公衆衛生の専門家の話を伝えた。「1年から1年半先になると思っていたが、もっと早く実現するかもしれないという情報もある」との期待も示した。

 世界保健機関(WHO)が公表している開発リストによると、4月26日時点で米中などのバイオ企業や研究機関のワクチン候補七つで臨床試験(治験)が始まっている。ほかにも世界中で82の候補があげられている。

 WHOのテドロス・アダノム事務局長は3月末、会見でワクチン開発には「12~18カ月かかる」と述べた。通常、ワクチン開発には数年以上かかるとされる。それよりも早い実用化の可能性があるのは、ウイルスの「遺伝情報」や、遺伝子組み換え技術を使う新しいタイプのワクチン開発への期待が大きいからだ。

 インフルエンザなど、いま使われているワクチンの多くは、鶏の卵のなかで増やしたウイルスを使う。しかし、この方法だと、病原性があるウイルスを取り扱うため、専用の設備が必要になる。新型コロナだと、WHOが定める施設基準「BSL」(バイオセーフティー・レベル)でエボラウイルスなどで必要な「4」に次ぐ、「3」が求められる。新型コロナウイルスは卵のなかで増えず、特殊な細胞を使って増やす必要があるという。

 さらに人で試験する前に、ウイルスの毒性を弱められているかの確認などに数カ月かかり、実用化までに長い時間を要する。

 一方、遺伝情報などを使う場合はウイルスそのものを使わずに済み、開発期間を大幅に短縮できると期待されている。

 米国内で臨床試験を始めたのが、米国立保健研究所(NIH)。米バイオ企業「モデルナ」と共同開発するワクチンは、遺伝情報を伝える「メッセンジャーRNA(mRNA)」という物質を使う。市販までに少なくとも1年~1年半かかる見通しだが、今秋には医療従事者らに使える可能性があるという。

 英オックスフォード大は4月23日、遺伝子組み換え技術を使ったワクチンの治験を始めた。協力者を募集する国営の国民保健サービス(NHS)によると、18~55歳の健康な最大1100人超を募る。早ければ今年9月にも有効性の結果が出る。開発チームのサラ・ギルバート教授は英紙タイムズに「動物実験の結果が出始めたばかりだが、これまでのところうまくいっている」と語った。英政府は21日、2千万ポンド(約27億円)の追加支援を発表した。

 国内でも、大阪大と阪大発の創薬ベンチャー「アンジェス」(大阪)は、ウイルスの一部をつくるDNAを使った「DNAワクチン」の開発に着手し、動物実験を始めた。阪大はウイルスを覆う「殻」を再現した粒子を使う方法でも開発を急ぐ。

 ウイルスそのものを使うと、臨床試験の開始までに1~2年かかるが、DNAだと半年、この粒子の場合は半年から1年に短くできるという。阪大はウイルスそのものを使う従来の方法でも研究を進める。金田安史理事(遺伝子治療学)は「どれが効果を示すかは治験でないと分からない。そのために1の矢、2の矢、3の矢を撃つ」と話す。

 いまのところ、コロナウイルスで実用化しているワクチンはない。感染しても普通の風邪で終わることが多く、ワクチンをつくる必要がなかったためだ。

 しかし、2002~03年に同じコロナウイルスが原因の重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行し、世界各国でワクチン開発が始まった。しかし、結局実現には至らず、約8千人の感染者、約800人の死者を出し、流行は終息した。

 北里大の中山哲夫特任教授(ウイルス感染制御学)は「病原体遺伝情報を使ったワクチンが人に広く使われた経験はなく、有効なものがつくれるかは未知数だ。どんな方法ならば新型コロナウイルスに対して有効なワクチンをつくれるかも分かっておらず、できる時期は見通しにくい」という。(合田禄、今直也、ロンドン=下司佳代子)

ワクチンは「国家安全保障に不可欠」

 ワクチンが使えるようになるには、臨床試験を通し、有効性と安全性を証明することが不可欠だ。第一段階で主に安全性、第二段階で主に有効性を確認。第三段階で人数を増やして有効性と安全性を確かめる。

 大阪大免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之招へい教授(免疫学)は「ワクチンは健康な人に使う。重大な副作用が出ると大変なことになる」と話す。通常は数千人規模の臨床試験が必要で、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査などを経て、一般の人が使えるようになるには「2年以上はかかる」とみる。

 審査にかかる時間は通常は1年ほど。ただし、パンデミック(世界的大流行)の状況下で、ほかの医薬品より審査が優先され、期間が短くなる可能性はある。

 海外企業のワクチン候補が有望だと分かってくれば、複数の国で同時に臨床試験をする「国際共同治験」に参加することもある。海外で承認されたワクチンを緊急輸入する「特例承認」という道もあり、日本と同水準の承認制度を備えている国で承認されていれば使える。2009年に新型インフルエンザが流行した際は、英国とスイスの企業のワクチンが特例承認された。

 ただ、ワクチンは自国民の健康を守る「安全保障」として考えるべきだとの意見もある。輸入に過度に期待せず、国内での生産体制が必要との声は強い。

 ドイツの地元紙ウェルトは3月、米国がワクチン製造を手がける独バイオテック企業に対し、資金提供する代わりにワクチンを独占できるようにしてほしいと申し出た、と報じた。

 企業も米側も報道を否定したが、AFP通信によると、ドイツ政府は国内企業が欧州外から乗っ取られないように規制する法案をつくった。アルトマイヤー経済相は「ワクチンのようなきわめて重要な物資の供給などは、ドイツの国家安全保障に不可欠だ」と述べた。欧州委員会は、この会社に最大8千万ユーロの資金支援を行うと発表している。